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東京地方裁判所 昭和61年(わ)874号 判決

本籍及び住居

東京都足立区入谷間地三二六番地

貸倉庫業

福田一雄

昭和二一年六月二二日生

本籍及び住居

東京都足立区入谷町三二六番地

無職

福田まき子

昭和二〇年一二月一日生

右両名に対する各相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺坂衛出席の上審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人福田一雄を懲役六月及び罰金二三〇〇万円に、被告人福田まき子を懲役六月及び罰金二三〇〇万円に処する。

被告人両名において、その罰金を完納することができないときは、いずれも金二〇万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判確定の日から各二年間、それぞれの懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべ事実)

被告人福田一雄及びその妻の被告人福田まき子は、被告人福田一雄の実父で、かつ被告人福田まき子の養父である福田精一の死亡によりそれぞれ同人の財産を相続したものであるが、小島葵、俵利美、二宮啓と共謀の上、被告人両名の各相続税について架空債務を計上して課税価格を減少させる方法により相続税を免れようと企て、昭和六〇年五月二二日、東京都足立区栗原三丁目一〇番六号所在の所轄西新井税務署において、同税務署長に対し、被相続人福田精一の死亡により同人の財産を相続した被告人両名の正規の相続税課税価格は別表「正規の相続税課税価格」欄記載のとおり合計八億九八五五万九〇〇〇円であったのにかかわらず、右福田精一には川野栄子に対する四億五五〇〇万円の債務があり、これを被告人両名において別表「債務額」欄記載のとおり、それぞれ負担することが確定したので、それぞれの取得財産の価格から控除すると被告人両名の相続税課税価格は別表「申告相続税課税価格」欄記載のとおり合計四億五〇三八万七〇〇〇円で、それぞれ遺産にかかる基礎控除額を控除して算出すると被告人両名の相続税額は別表「申告相続税額」欄記載のとおり合計一億八五二二万二〇〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により別表「正規の相続税額」欄記載のとおり被告人両名の正規の相続税額合計四億七五九六万六八〇〇円と右申告税額合計との差額合計二億九〇七四万四八〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人両名の当公判廷(第七回及び第一二回公判)における各供述

一  被告人両名の検察官に対する各供述調書

一  分離前の相被告人小島葵、同二宮啓、同俵利美の当公判廷(第七回公判)における各供述

一  小島葵(昭和六〇年一二月一五日付)、二宮啓(昭和六一年二月二一日付三六枚綴のもの)、俵利美(昭和六〇一二月一六日付)、国武昇、福島修一(謄本)、清水俊彦(謄本)の検察官に対する各供述調書

一  山崎恭子、大盛英信、萩原一善、川野栄子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  東京都足立区長作成の戸籍謄本(福田精一の戸籍)

一  大蔵事務官各作成の借入金調査書、未払金調査書、未払利息調査書、預り敷金調査書、土地調査書、家屋調査書、現金調査書、普通預金調査書、定期預金調査書、出資金調査書、家庭用財産調査書、その他の財産調査書、代償分割(未払金)調査書、代償分割(未収金)調査書、公租公課調査書、葬式費用調査書

一  押収してある相続税の申告書綴六〇・三・二〇提出分一綴(昭和六〇年押第七二六号の一一)、相続税の申告書綴六〇・五・二二提出分一綴(同号の一二)、及び相続税の申告書控(同号の一三)

(法令の適用)

被告人両名の判示所為はいずれも刑法六〇条、相続税法六八条一項、刑法六五条一項に該当するところ、被告人両名については、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、情状により相続税同法六八条二項を適用することとし、その所定刑期及び金額の範囲内で、被告人福田一雄を懲役六月及び罰金二三〇〇万円に、被告人福田まき子を懲役六月及び罰金二三〇〇万円に処し、被告人両名においてその罰金を完納することができないときは、刑法一八条によりいずれも金二〇万円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、被告人両名に対し、この裁判確定の日から各二年間、それぞれその懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田耕生 裁判官 白神文弘 裁判官 坂本宗一)

別表

〈省略〉

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